世に命を受けて十五余年、生まれ育った地域の保育所や幼稚園、小学校そして中学校へ自分の意思とは別に用意された道を歩み、高校進学で初めて、自分の意思で学びの選択をする皆さんがほとんどのことと思います。
そんな意味からすると、高校生活からが本当の自分を作り上げていくスタートなのです。そして、二年生、三年生の皆さんは、その道をすでに歩み出しているのです。
静修学園は、一昨年創立100年を迎えた北海道屈指の伝統校です。卒業生は3万人を超えています。では、100年前はどんな日本だったのでしょうか、近代国家となっても、まだまだ貧しいアジアの一国、ましてや北海道はようやく本格的な開拓が始まったばかりの頃です。大正年間の義務教育後の進学率は約15%程度、ほとんどの人は小学校までの学校教育でした。そんな時代に、志高い若い女性の力でこの学園は創設されたのです。
静修学園のキャッチコピー「ココロスイッチ」、まさしく先達の女性たちは、心にスイッチを入れ、艱難辛苦を乗り越えて、学園創世記を作り上げたのです。そう簡単にはできない素晴らしい偉業です。
これからの時代は人生100年、皆さんには、揚々と広がる長い人生が待っています。長い人生を、細い線で描くのか、大きく広がる平面、立体で描くのかは、皆さんの選択と努力そして挑戦心で決まります。どうか、先達をお手本に実践力ある大きな人間に成長してください。
ここで私の人生を変えたエピソードを一つ紹介します。私が大学3年生の夏の出来事でした。
京都で400年続く老舗主人の講演会を聞く機会がありました。正直、内容も良く理解していませんでしたが、講演が終わり、新興菓子店の主人が謝辞を述べたときでした。「さすが、長い歴史を重ね、変わらぬ味を守り続けてこられた・・・」と話が進んだとき、その老舗主人が大きな声で、「わたしの店が変わらぬ味なんて誰が言った」と一喝、「私の店の味は、たゆまぬ研鑽で大いに変化してきた。その時代その時代の食生活に応じた商品作りをしてきた。変化しなければ成長もない。400年前と同じものなんか、誰が買うものか・・・」と続けられました。その迫力に、ウトウトしていた私は目が覚めました。
そうなのです、伝統を守るということは、挑戦なのです。常に時代に対応した変化をすることで守られるのです。静修学園の次の100年を担う皆さん、高校生活も卒業後も、GLOBALな社会で変化を恐れず、いつもココロのスイッチをONにして、自分の力で前に進んでください。
校長
静もって身を修め、倹もって徳を養う
「静以修身倹以養徳」
という校名の由来に深く想いをいたし、
伝統に培われた精神的風土を生かして
豊かな知性を磨き
優雅な徳性をそなえ
すこやかな身体を養い
もって未来を担う個性豊かな人間を育成する。